海外委託訴訟と日技

歯科技工海外委託訴訟の件に関して、事あるたびに話題に上がっているが、日技の立場としては個人の起こした民事訴訟に法人団体として支援はできない旨の説明を何度もされてきた。また、会員としてその言葉を鵜呑みにしてきた。

はたしてその認識は正しかったのだろうか?

以下に今回の訴訟の弁護を受け持っていただいている川上詩朗弁護士の話を引用して、歯科技工士として、一国民として本懐はどこにあるのか再考してみたい。



★歯科技工海外委託控訴の「川上詩朗弁護士」の話


前回の進行協議から今回の進行協議まで、何をしてきたかを裁判官に説明をした。
その後に、国の側が進行協議で部屋に入った。その後、交互に我々も部屋に入った。

この間の私どもがやってきたことは、海外委託の歯科技工物について、まずは歯科技工士会、歯科医師会、患者の立場では消費者関係の団体人たちと協議をする場を設けてもらいたいと。

海外委託の歯科技工物の第1回目の調査を厚生労働省も行い、報告書を出している。
また、保団連などの団体も色々な調査報告書を出している。

そこで、一体何が問題で、今後の歯科技工のあり方はどうあるべきか、についてきちんとした関係者の話し合いの場を持つことはまず必要ではないか、と前回の進行協議で話した。

これは、裁判官も同じ考えである。
だから裁判官のほうから話し合いの場を設けましょうよ、という呼びかけがあった。

それに対して、国の側は訴訟外で、しかるべき歯科業界団体から、この問題について正式な申し入れがあれば、厚生労働省としても応じるとまで、裁判官の方から説得をした結果というかその前は、応じないという感じであったが、

厚生労働省の方から話が出てきた。
日本歯科技工士会に対しては、きちんとこのテーマで、話し合いの場に出てほしいと要請した。しかし、日技は積極的ではない。つまり動かない。
動かない理由はよく分からないが、我々が訴訟をやっているのか、それはあまり理由にならないと思う。

今回は、訴訟とは別に、歯科技工業界団体として、きちんと正面からこの問題について、厚生労働省に問題を提起していけばいいのであるが、その動きを日技はしない。

あるいは、この間何度も日技として話はしてきている、という言い方をする。

話はしてきていると思うが、厚生労働省が応じると言うのであるから、突っ込んだ、しかも継続的な話はする必要がある。
今後どうするのか、対策を含めた話を持っていけばいいと思う。

それでは、前には進まないので、都道府県の歯科技工士会へ我々が裁判所へ掲げている問題について、賛同するかどうか、賛同していただけないかと申し入れをしてきた。
全部の47都道府県へ依頼をしたところ、17の歯科技工士会から我々の要求に対して賛同するという答えをいただいた。

さらに、これを増やしていこうと考えている。
目標は30歯科技工士会であり、それを持って再度、日技に要請したいと思っている。
日技はそれを踏まえて、きちんと正面から厚生労働省で、話合いの申し入れをしてもらいたい。

厚生労働省は、日技から申し入れがあれば、応じると述べている。

そこで、日技が動けばいいと思う。
日技が動かない可能性があるので、その場合はどうするかであるが、賛同していただいた県の歯科技工士会を束ねて、その代表者が厚生労働省と話をする。

今後の課題、可能性としては、日技が動かない以上は、二次的方法でいくこともあり得ると考えている。

厚生労働省との継続的な協議の場を設けていく。
できれば、そこに歯科医師会も参加をしてほしいと思っている。
あるいは各消費者団体の方々も、加われる形に持っていけたらいい。

少なくとも、継続的な協議の場を設けことを、厚生労働省に言明させるようなものを、勝ち取れれば次につながっていくと思っている。

今日は、そのことを裁判官にお伝えした。

裁判官の方からは、みなさんが今までの思いをもってやられてきた。
そこで、何らかの形に、次につなげていくようにしないと、裁判を起こした意味がない。
裁判を起こした限りは、何らかの形でつなげていきたい、と裁判官自身も思っている。


このテーマについては、裁判官にとっても未解決の課題であり、きちんと解決する枠組みはないかと、和解の場で国の側にこのことで、何らかの約束をさせようとしたい、と考えていた。

しかし、国の側は、前回も述べたが、この訴訟を和解という形での約束はできない、というわけである。

そこで、訴訟外で何らかの約束をさせるものを、我々が取り組むことで作って、訴訟の場に持ち込む形で解決できないか、という話をしてきた。
しかし、国は“約束”とうものはできないとしてきた。

進行協議の継続をお願いしたが、我々の意図を裁判官は理解し、裁判官としての何とかしたい、ということであった。

しかし実際上、国の側は訴訟の場で、内容は別にして、あるいはどんな内容にしろ、約束をすることはできない、と言い切っている以上、訴訟の進行協議を重ねる意味はない。

そこで結論として次回、弁論を開くこことなった。

次回は8月5日、午後3時に高裁の817法廷で開かれる。
控訴審の最終弁論で、結審となる。

我々は引き続き、訴訟外の動きをすることで、何か出てくれば、それを裁判所にお伝えするので、場合にとってはこの弁論は開かれないかもしれない。

全国消費者団体などに会って、説明をしてきたが、このような問題があることを、全く知らなかった。
消費者の観点からも歯科技工の海外委託はおかしい、厚生労働省はなぜ、動かないのでしょうか(これを放置しているのか)」と首をかしげていた。
素朴な発想としては、何故国は動かないのか、ということであった。
まずは、現状を伝えて、何が問題であるかを、消費者団体として検討して、声を挙げてもらいたいと要請をしてきた。
資料もほしいというので、色々な資料を渡した。

また、この間、各自体の決議が上がってきている。
現在、県議会、市議会、町村議会、全部合わせて30の自体で、歯科技工の海外委託で、政府としてきちんとした対応をしてほしい、と意見書が上がっている。

支援の署名は、約2万名の名簿が集まっている。
また、保団連からも厚生労働省に、働きかけてもらう。
要請を出してもらい、話合いの場ができれば我々も同席をさせてほしいと思っている。

継続的協議の場が設けられれば、一つのステップとなると思っている

NewS Sauce
医科歯科通信 今日の歯科ニュースhttp://insite.typepad.jp/shigakuinfo/


厚労省の側から業界団体からの申し入れがあれば話し合いに応じるとまで言っているのに、頑なに動こうとしない日技の本音はいったいどこにあるのだろうか。